1. 臨床研究「保湿剤および抗ヒスタミン薬治療抵抗性皮膚そう痒症に対するノイロトロピン注射液の止痒効果の検討」
目的
保湿剤および抗ヒスタミン薬治療抵抗性の皮膚そう痒症に対するノイロトロピン注射液の有効性について、オープン試験によりかゆみ日記によりかゆみの程度をスコア化して検討する。
背景と研究計画の根拠
皮膚そう痒症は、皮膚に痒みをおこすような皮疹がないにもかかわらず痒みを訴える病態であり、その発症原因には皮膚の乾燥(ドライスキン)、内服している薬剤、基礎疾患などがある。特に高齢者にみられる老人性皮膚そう痒症は、ドライスキンが原因で生じることが多い。治療法として、ドライスキンに対して外用保湿剤が、痒みの抑制に抗ヒスタミン薬が用いられているが、それらの効果が不十分な場合もある。
ノイロトロピン®注射液3.6単位(以下ノイロトロピン注射液)は、皮膚疾患に伴うそう痒、症候性神経痛、腰痛症、頸肩腕症候群、スモン(SMON)後遺症状の冷感・異常知覚・痛み、アレルギー性鼻炎の効能・効果を有する薬剤である。ドライスキンモデルを用いた最近の研究から、痒み過敏の原因となる真皮層から表皮層への神経伸張の抑制効果および神経反発因子であるSemaphorin 3A(セマフォリン スリー エー:Sema3A)の遺伝子レベルでの増加効果が明らかとなっている。
以上のことから、ノイロトロピン注射液は抗ヒスタミン薬服用や保湿剤外用にて効果不十分な皮膚そう痒症患者のかゆみに対して効果が期待される治療薬である。かゆみ日記にてのスコア評価を用いることにより、より正確な評価が可能となる。この臨床研究によりノイロトロピン注射液の有効性が確認されれば、治療のオプションとしてそう痒性皮膚疾患患者に貢献できると考えられる。
研究デザイン
抗ヒスタミン薬服用や保湿剤の治療にて効果不十分な皮膚そう痒症患者に対しノイロトロピン注射液を週1-3回注射し、上乗せ効果を試験開始時と試験終了後のそう痒のgrade(白取の分類)の推移より評価する5段階評価、すなわち著明改善(4→0、4→1、3→0、2→0)、中等度改善(4→2、3→1、1→0)、軽度改善(4→3、3→2、2→1)、不変(4→4、3→3、2→2、1→1)、悪化(そう痒が悪化したもの)を主要評価項目として検討する。これまでノイロトロピン注射液での「そう痒のgrade(白取の分類)の推移」を用いた試験では皮膚掻痒症45例に対して日中のかゆみに対して中等度改善以上は37.8%、軽度改善以上は77.8%であり、夜間のかゆみに対しては中等度改善以上は40.0%、軽度改善以上は91.1%であった。また、白取の重症度基準(被験者評価)に基づくかゆみスコア変化量、かゆみの Visual Analogue Scale(VAS)変化量QOLの変化を副次評価項目として検討する。
日程 | 週 | 1週 | 2週 | 3週 | 4週 | 5週 | 6週 | 7週 | 8週 |
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日 | 1-7 | 8-14 | 15-21 | 22-28 | 29-35 | 36-42 | 43-49 | 50-58 | |
同意 | ○ | ||||||||
登録 | ○ | ||||||||
試験薬 | |||||||||
VAS | |||||||||
白取の重症度基準(患者評価) | |||||||||
DLQI(患者評価) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
主要アウトカム評価項目
介入後7週間目時点の白取の重症度基準(被験者評価)に基づくgradeの推移
副次アウトカム評価項目
- 白取の重症度基準(被験者評価)に基づくかゆみスコア変化量
- かゆみのVAS変化量
- QOLの推移
- 副作用発現割合
適格基準
- 皮膚そう痒症であること。
- 同意取得時の年齢が20歳以上である。
- 同意取得日の1週間以上前からかゆみに対する薬物治療(保湿剤、抗ヒスタミン薬など)を行っている。
- 前観察終了翌日の問診で、日中および夜間の少なくとも一方のかゆみの程度が、白取の重症度基準(表1)の「2.軽度のかゆみ」以上である。
- 研究参加について本人から文書による同意が得られている。
- かゆみ日記に記述できること。
除外基準
- ノイロトロピン(注射液および錠剤)に過敏症の既往歴がある。
- 他疾患の治療のためにノイロトロピン(注射液および錠剤)および薬効評価に影響を及ぼすと考えられる薬剤の継続投与が必要である。
- 授乳婦である、妊娠している、妊娠している可能性がある、または試験期間中に妊娠を希望している
- 定期的な受診が困難である。
- 重篤な心疾患・肝疾患・腎疾患などの合併症を有する。
- その他主治医が不適当と判断している。
UMIN試験ID: UMIN000021318
2. 臨床研究実施施設一覧
施設 | 実施責任者 | 実施状況 |
島根大学医学部皮膚科 | 研究代表者:金子栄 | ○ |
島根県立中央病院皮膚科 | 辻野佳雄 | ○ |
とうぎ皮膚科クリニック | 東儀君子 | ○ |
本田皮膚科医院 | 本田栄 | ○ |
福代皮膚科 | 福代新治 | |
高垣皮膚科クリニック | 高垣謙二 |
3. 関連リンク
日本皮膚科学会汎発性皮膚そう痒症診療ガイドライン(現在修正中) | https://www.dermatol.or.jp/modules/guideline/index.php?content_id=2 |
日本臓器株式会社 | www.nippon-zoki.co.jp |